非常用エレベーターを使わなくても当たり前に駆け上がる強さを!

人を救う仕事

建築基準法第34条第2項の規定により

地盤面からの高さが31mを超える建築物には

非常用エレベーターを設置しなければなりません。

※建築基準法には「非常用の昇降機」と書かれています。

 

一般的に建築物の階の高さは3m

31mを超える高さの建築物を階数で表すと

31m➗3m=10.33

およそ11階建て以上の建築物には

非常用エレベーターが必要になります。

 

 

高さが31mを超える建築物は岡崎市内には150棟程度ありますが

ここからはマンションを例に挙げさせていただきます。

 

11階建て以上のマンションは多く見かけますが

正直なところ非常用エレベーターは設置されていません。

そして特徴的なのは15階建てまでのマンションが大半を占めており

16階建て以上のマンションはわずか6棟しかありません。

 

31mを超えるマンションはたくさん建っているのに

非常用エレベーターは設置されておらず

そしてその大半が15階建てまでマンション

 

これには理由があります。

それは建築基準法施行令第129条の13の2の規定です。

ここに非常用エレベーターの緩和規定があり

マンションの建築には

この中の第3号の規定が多く使われており

非常用エレベーターの設置が免除されています。

 

端的に説明すると

15階までの階数で建てて

11階以上の階の各住戸部分を100㎡以内の燃えにくい構造で造れば

非常用エレベーターを免除して良いよ。

といった内容です。

 

非常用エレベーターの設置の目的は

住人の避難のための用途ではなく

火災時における僕たち消防吏員の消火活動に使うためのものです。

 

この非常用エレベーターは

非常時でも稼働できるような制御装置や予備電源が付いており

エレベーター本体だけでなく

区画内に火炎が入らない構造で仕上げられ

乗降ロビーにも様々な仕様が定められています。

 

つまり

非常用エレベーターを設置するためには

多額の設備投資が必要になり

マンションの設計に多くの制限が必要となることから

マンションは15階建て以下の高さで建てられることが多いのです。

 

 

つまり

何が言いたいかと言うと笑

 

16階建て以上の高層マンションで火災が発生した際は

非常用エレベーターを使って上層階へ向かうことができます

 

15階建てまでのマンションで火災が発生した場合は

非常用エレベーターがないので

僕たち消防吏員は

出火している階まで駆け上がらなくてはならないのです。

 

出火した階が15階ならば

僕たちは15階まで駆け上がらなければなりません。

 

そして

駆け上がる際には次の負荷があります。

防火服:10kg
空気呼吸器:12kg
消防用ホース2本:16kg
分岐金具:3.6kg
合計:41.6kg

およそ41kgもの負荷を身に纏って

階段を駆け上がる必要があるのです。

 

 

そんなの消防士だから

当たり前でしょ!?

って思われるかもしれませんが

 

これがびっくりするほどに

みんなやれないんです、、、、。

 

15階を駆け上がることができない。

つまりは

消火活動のスタート地点にも立てないのが現状です。

 

なので

僕は4月の時点で仲間たちに伝えます。

119番通報をかけてくる市民の方の想いを知ること
建築されるマンションの特性
高層マンションでの消火戦術
高層マンションでは
出火階へ辿り着かなければ
消火活動が開始できない。
この現実をきちんと理解してもらった上で
4月からメニューを組み立てます。
まずは軽装で15階分を駆け上がることから始める。
これに慣れたら
防火服(10kg)を纏って駆け上がる。
これに慣れたら
防火服に空気呼吸器(12kg)を背負って駆け上がる。
これに慣れたら
ホースバッグ(ホース16kg +分岐3.6kg)を担いで駆け上がる。
少しずつ負荷を加えていき
怪我なく成長を見守ります。
これが出来るようになって
ようやく
15階で出火した部屋への消火訓練を開始する。
人は自分がしんどくなると
活動そのものがになります。
人は自分がしんどくなると
他者に厳しくなります。
15階分駆け上がって息が上がって
しんどい状態だと
自分の活動内容だけでいっぱいいっぱいになり
仲間のミスをそのまま放置したり
場合によっては
声を荒げて仲間に強くあたったりもする。
辛い時に陥る心理や行動を訓練で知っておく。
しんどい時
自分は自分に甘くなり
他者に厳しくなることを。
それを知らずに
高層階での火災を迎えたとき
活動を諦める隊員もいるでしょう。
動かず仲間を罵ってばかりの隊員もいるでしょう。
辛うじて出火階へ辿り着いても
心拍数が上がり息の切れた状態での
屋内進入、屋内消火は
怪我や殉職事故を招き危険極まりない。
そして何よりも
僕たちを信じて
119番通報をかけて来てくれた
市民の方々の期待を裏切ることになる。
日常から過酷を知っていれば対応ができる。
仲間の特徴を知っておけばフォローに回れる
高層階を戦い抜く強い精神と肉体
そして仲間を想う気持ちがあれば
僕たちに怖いものなどない。
そんな暑苦しいことを4月から提示して
仲間と共に成長を楽しんできました。
9月になり人事異動が行われ
僕と共に訓練に励んだ仲間がそれぞれの部署へ異動しました。
嬉しかったのが
異動した先でも駆け上がることを続けてくれていると言うこと。
それどころか
他の仲間にも声をかけてみんなで始めたと言うこと。
僕は良い仲間に恵まれています。
日々これ仲間たちに感謝して
仲間たちと力を合わせて市民のために尽力し続けます!
今日も最後までお読みいただきありがとうございます(^-^)
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