ヒートショックを防いで大切な人を守れたら良いのにな
暖冬と呼ばれる今年の冬も
いよいよ寒さが厳しくなって来たように思えます。
今日はヒートショックが原因と思われる事案のお話をさせていただきます。
エピソード
令和6年能登半島地震への緊急消防援助隊の派遣から帰隊した僕は
いつもと変わらぬ生活環境でいつもと変わらぬ勤務を始めました。
帰隊後2回目の勤務となった昨日は
火災出動こそありませんでしたが
日中からPA出動が続き
気づけば休憩もほとんどないまま時計の針は22時を指してしました。
この日に出たPA出動のうち4件が
「高齢者の入浴中における救急事案」でした。
4件のうち1件は「社会死状態(既に亡くなられている状態)」の傷病者で、もう1件は「CPA状態」の傷病者でした。
残り2件は幸いにも軽症で済みました。
119番通報を受けた通信課員は
意識呼吸が無いことが予想されると傷病者のそばにいる通報者に対して
胸骨圧迫を行うよう指示させていただきます。
入浴中の事故で傷病者が浴槽の中にいる場合は
救急隊が到着するまでに
浴槽内のお湯(水)を抜くよう指示し
※水没を防ぎ傷病者の呼吸を確保し窒息させないため。
可能であれば傷病者を浴槽から出しておくよう指示します。
とはいえ
一般の方が一人で浴槽から人を出すのは難しいので
現場到着した後に救急隊員が救出することになります。
祖父母の家を訪れたお孫さん姉妹が家の中に入ると
祖父母の姿がなく
浴室を確認するとおじいちゃんが浴槽の中で沈んでいた。
お姉さんは119番通報を実施し通信課員に言われるままに水を抜き
浴槽からおじいちゃんを救い出そうとするも重たくてできない。
妹さんは僕たち救急隊・支援隊が到着するのを家の外で泣きながら待っていました。
死後硬直が始まっており心電図波形は心静止。
明白な死亡で蘇生の可能性が無い場合は救急搬送は実施しない。
現場から110番通報を実施し、事後を警察官へ引き継ぐことになります。
警察官が現場到着するまでの間に
多くのご家族が家に集まってくる。
おじいちゃんから見た息子や娘、孫にひ孫たち。
気丈に振る舞う人もいれば
溢れる感情のままに泣きじゃくる人もいる。
亡くなられたおじいちゃんの人柄が思い浮かぶ。
そんな中
立ちすくみ
肩と手を震わせながらずっと涙を堪えてる人がいる。
第一発見者であるお孫さんで、お姉ちゃんの方だ。
急な報せだと言うのに
警察官が現場到着するまでの45分間でこんなにも多くのご家族が集まってくれるおじいちゃん。
きっと本当にみんなから愛されていたおじいちゃん。
そんな大好きなおじいちゃんの死を目の当たりにして
僕たちが到着するまでの間、必死で耐え抜いてたであろうお姉さん。
「泣いて良いんですよ。」
とだけ伝えた。
こくり。と頭を下げて
ぽろぽろぽろぽろ泣き出すお姉さん。
僕は次男で昔から泣き虫だから
きっとたくさん泣いて発散できてたんだと思う。
一方で僕の兄が泣いたところは見たことがない。
きっと長男や長女って存在は「耐える」立場を生きているのかもしれない。
僕の奥さんも長女だ。
そして彼女は20代の頃にお父さんを病気で亡くしている。
きっと彼女も当時は泣きたいのを必死に耐えて
妹が泣きじゃくるのをなだめていたのではないかと思う。
ヒートショック
昨日続いた入浴中の救急事案は全て「高齢者」でした。
ヒートショックが原因とは決していえません。
ヒートショックが何らかの異常な状態を引き起こしている可能性は否定できない。
貴方のご両親やおじいちゃん、おばあちゃんたちの生活はいかがですか。
家の中での「寒暖差」は生まれていませんか?
大切な人の顔を見に行きがてら
大切な人の家の中に潜む寒暖差をどうか緩やかなものにしてあげてください。
11月〜2月が危険?ヒートショックによる脳卒中・心筋梗塞を防ごう
PA出動とは
消防ポンプ車(Pumper)と救急車(Ambulance)の頭文字を取ったもので
PA連携やPA出動と呼ばれています。
通常、急な病気や事故に遭った際は119番通報すれば救急車が駆けつけます。
119番通報時に傷病者が重症であると予測される場合や
建物内の階段や通路が狭くて傷病者の搬送が困難になる場合は
必要に応じて救急隊と一緒に消防隊が出動し
救急活動を連携して行うことを「PA出動」「PA連携」と呼びます。
最寄りの消防署に救急車がいないときは
119番通報を受けた通信課は救急隊に出場を指令を流します。
しかし
年々救急需要は増加しており
現在では救急車が出場したまま消防署へ帰ってこないケースも多く見られます。
救命措置が必要な救急事案が発生した場合に
通報現場から最も近い位置にある消防署に救急車が無い場合も稀にあります、、、
そんな場合には、通報現場から二番目に近い距離にある消防署から救急車が出場します。
しかしながら
それでは救える命を取り逃がすことになります。
基本的に消防士は全員救急の資格を持っているので
最寄りの消防署に救急車が無い場合は、消防車で救命措置が必要な救急現場へ出動します。
現場にいち早く駆け付け、傷病者に胸骨圧迫(心臓マッサージ)や止血処置などの応急処置を行います。
このように消防隊が救急現場で救急隊と連携して応急処置を行うことで
僕たちは救命率の向上や市民の安全・安心を確保するよう努めています。
PA出動へのご理解を!
救急の現場では
「救急車を呼んだのに消防車が来た!」
と驚かれる場合があります。
これは
「傷病者の命を全力で救うために駆けつけたんだな」
って思っていただけると幸いです。
今後とも救急に限らず消防行政全般へのご理解とご協力をよろしくお願いします。
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