令和6年1月1日に発災した令和6年能登半島地震
僕の職場でもすぐさま第1次隊が組まれ
発災した当日に能登半島を目指して出発しました。
発災の翌日2日
僕が出勤すると事務所内は緊急消防援助隊一色。
慌ただしく第2次隊以降の派遣隊員の人選を行いました。
僕の独断と偏見で
「消防士」の階級の者を派遣隊員として人選する。
この「消防士」とは
一般的に使われている職業としての「消防士」ではなくて
階級としての「消防士」です。
そして
この「消防士」は
消防吏員の中で最も下位にある階級です。
言葉は汚いですが
分かりやすく表現すると「一番下っ端」という身分です。
被災地へ向かわせる派遣隊員の中に
この「消防士」の階級の者を僕が選ぶもんだから
一部の上司から苦言が出ました。
被災地へ消防士を連れて行って大丈夫なの?
消防士じゃ役に立たないよ。
どの面で不安なのか。
また何を理由に役に立たないと言えるのか。
僕は上司に説明する。
消防士の方がよっぽど被災者のために動いてくれますよ。
彼らには熱い思いと体力がある。
若い世代にこそ経験をしていただきたい。
もちろん
階級だけではなく個々人の人柄や能力を見ての選出である。
幸い上司が納得してくれたことから
第2次隊からは「消防士」の階級の者を派遣することができました。
そこから約1か月が経ち
僕が活動している災害ボランティア愛知人に
関心を持ってくれた隊員が何人か声をかけてくれるようになりました。
その中の一人に実際に派遣された「消防士」の隊員が居て
「一緒に被災地でボランティアをしたいです!」
と話してくれたのですが。
ボランティアの話の流れで彼が話してくれたのが
「消防士」として彼自身が緊急消防援助隊へ派遣されたことへの賛否の声でした。
彼が言うには
緊急消防援助隊へ行った経験は個人的には光栄なことで良い経験になったとのこと。
しかしながら
「消防士」の彼が派遣されたことを良く思っていない先輩が多く居て
「自分なんかが派遣されて申し訳ないです。」
と話してくれました。
派遣隊員の中に「消防士」を入れる流れを作ったのは僕であることを伝える。
君が「消防士」として派遣されたことを申し訳なく思っている
とすれば
それは僕の責任である旨を伝えました。
聴くと
救助隊の先輩方からの声が多かったようで
「なんで消防士のあいつを行かせるのか。」
「消防士なんて行かせても役に立たないからもっと経験のある奴を行かせた方が良い。」
など
なかなかの心無い言葉を聞かせられたようです。
そりゃ辛いですよね。
僕は伝える。
・緊急消防援助隊は専任・選抜制ではないこと。
・毎度寄せ集めの隊が組まれていること。
・自然災害におけるプロは消防の世界には居ないこと。
そして
僕自身、東日本大震災以来ずっと災害ボランティアを続けて来ているが
僕以外に被災地でボランティアなどの活動をしている職員はこの職場に居ないことを伝える。
つまりは
下っ端である「消防士」を含めて
全階級の者が
自然災害の前では「素人」であると言うこと。
だから
君が申し訳ないと思う必要はない。
大切なのは
緊急消防援助隊としての被災地での活動経験を経て何を感じたか。
「消防士」と言う階級を理由に難癖を付けられてどう思ったか。
この経験をこの先の消防人生にどう活かしていくかを説いた。
この職場をもっと良くしていくためには
彼を含めた次世代の隊員の力が必要である。
5年後、10年後に彼が先輩や上司となり
後輩や部下を持つようになったとき
君ならどんな言葉を贈れるかイメージしよう。
そんなことを伝えると
嬉しそうに益々いろんな話をしてくれました。
これで一安心かな♪
はてさて
愛知県隊の緊急消防援助隊は第1次隊から第10次隊まで派遣をし
令和6年1月末日を以て撤退、終了となりました。
少なくとも緊急消防援助隊派遣期間中は
「緊急消防援助隊へ行きたい!」
「石川県は大丈夫かな」
「頑張れ石川!」
といった声がそこかしこから聞こえ
それなりに被災地や石川県への関心があった1月。
それがどうだろう、、、
緊急消防援助隊の派遣が終了し
2月になった途端に全く聞かなくなった。
幻だったかのように
能登半島地震も石川県の話題もこの職場から消え去った。
消防ってもんはこんなもんだ。
結局は自分自身の職歴に箔をつけたいだけ。
緊急消防援助隊としての派遣手当をもらいたいだけ。
そこには被災地への思いも
被災者さんたちへの思いもない。
これが現実だ。
だからやっぱり
僕たちは緊急消防援助隊の在り方を本気で考えて行かなければならない。
そして
考えられないなら無くせばいい。
税金の無駄遣いだ。
今回僕の独断と偏見で派遣を実現した
「消防士」と言う階級の者が
何を感じてくれて
この経験をどう活かして行ってくれるのか。
次世代を担う希望の消防士
蒔いた希望の種から芽が出るといいな。
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